理事長の部屋

理事長の部屋

1月:冬点描
―ウクライナ通信(1):一日も早く春が来ますように・・・―

枯れ木も山の賑わい、扇のように拡がった冬樹が所狭しと冬の山肌を飾ります。

 まだ4月にも入っていないのに、北日本を除く日本全国津々浦々日本列島津々浦々いっせいに桜が満開です。異例の早さの満開、至る所で観測史上最も早く桜の季節を迎えました。三重県でも例年満開は4月上旬ですが、今年は1週間ほど早いようです。なぜ全国的にこんなに早いのでしょうか。桜の開花には休眠打破と呼ばれる気候現象が重要な役割を演じます。休眠状態にある桜の冬芽を目覚めさせるためには、冬期に一定期間低温にさらされる必要があります。休眠から覚めた冬芽が、3月に入って急に暖かくなりますと、桜の蕾は一気に開花します。ところが三重県では一般に冬暖かくて休眠打破が弱く、桜の冬芽はなかなか休眠から覚めません。しかも3月に入っても東京や名古屋に比べ気温が低いため桜の開花が遅れます。これが三重県における桜の開花が東京や名古屋より遅い理由と考えられます。その三重県でも今年の1月はほんとうに寒く、25日には北勢、中勢地方で大雪となり、津市でも11cmの積雪を記録、1月としては過去最高でした。交通機関も大きく乱れ、我が家の鉢植えも何個か枯れてしまいました。「寒かった」という印象の残る今年の冬、しかしそれも1月下旬だけで、他はおしなべて平年並み、3月に入りますと逆に記録的な暖かさとなり、桜がいっせいに開花しました。寒かったのか、そうでなかったのかよく分からない、そんな今年の冬を、カメラで点描してみました。

 

冬の青空の下、主役を演じるのは、やはり枯れすすきです。

 

ひとたび暗雲が立ち込めますと景色は一変、墨絵の世界になります。

 

冬の陽を浴びて光る植物たちです。

 

 冬の畑に群れる雑草が、夥しい数の露に覆われているのでしょうか。光の粒のように輝きます。昼下がりなのに、朝降りた霜が残っているのでしょうか? (写真上)
 近寄ってみますと、細かい葉が陽を浴びて光っているだけです(写真右)

 

 こんもり茂る常緑樹のあちこちで、何やら怪しく光ります。光る虫でも群れているのでしょうか?
(写真上)

近寄ってみますと、葉の一部が光っているだけです(写真右)。

            

 

            冬樹の枝々が描く繊細な線描画の美しさに魅かれます。

 

 

 先日テレビを見ていましたら、茨城県立美術館で速水御舟展が開催されているとの報道がありました。その中で御舟の作品「丘の並木」が紹介されましたが、それを見て驚きました。葉の落ちた冬の木が4本並んでいます。夥しい数の細い枝の 1本1本、実に細かく描かれていて、まるで細密画をみるようです。写真の冬樹の枝の様子そのもので、写実力の確かさに感心させられました。

速水御舟 丘の並木 日本画 1922年 東京国立近代美術館蔵

       (独立行政法人国立美術館のホームページよりダウンロードしました)

 速水御舟は、1894(明治27東京浅草に生まれました。幼い頃より画才を発揮し、尋常高等小学校を卒業後、家の近くにあった画塾へ入門し松本楓湖の教えを受けて腕を磨きます。同門の兄弟子に今村紫紅(1880-1916)がいて、御舟に大きな影響を与えました。その後、御舟は常に日本画の新しい表現方法を模索しながら画作に励み、横山大観や下村観山らからも高く評価され、国内外の大きな展覧会で数々の賞を受賞します。日本画の将来を担う画家として嘱望されていましたが、1935(昭和10)年、腸チフスのために40歳の若さで急逝しました。

 

 

 御舟の絵画には、徹底した写実と琳派の影響を受けた装飾性、さらに象徴的な表現も加わり、独特の絵画空間が展開されます。右の作品は、1925(大正14)年に描かれた代表作「炎舞」ですが、燃え上がる炎に群れて舞う白い蛾が象徴的に描かれています。この絵は、同じく御舟の代表作である「名樹散椿」(めいじゅちりつばき)ともに、国の重要文化財の指定を受けています(山種美術館のホームページよりダウンロードしました)。

 

速水御舟 炎舞  1925年 山種美術館蔵

  さて今回はコロナの話はお休みにして、私たちが昨秋立ち上げましたNPO法人SunPanSaの会の活動をご紹介致します。

2)SunPanSaの会の活動
 理事長は上村眞由氏、毎年5月に三重県全域で開催されています「命の駅伝」(※)の代表を30年近く務め、がん研究の助成を続けて来られた方です。また軍事政権が誕生する前までのミャンマーで、各地の小さな村を巡り、ボランティアで井戸掘り活動を続けて来られました。副理事長3人は私も含めすべて医師、理事にも三重大学学長や三重県医師会長など3人の医師が入っており、役員に医師の多いことが本法人の特徴です。したがってどうしても医療的な支援が中心となり、その第一陣としてウクライナで不足している救急車を、中古ですが既に2台贈呈しました。今後も続けていく予定です。
 (※)「命の駅伝」とは、三重県内のマラソン好きのアスリートたちが集まり、1か月ほどかけて駅伝方式で県内各地域の病院や県庁、市役所などを順に巡って寄付金を集め、それをがん研究の助成に充てるものです。

3)ウクライナ傷病者のリハビリ治療 
 2番目のプロジェクトとして、戦禍により手足などを失ったウクライナ傷病者のリハビリ治療を支援することになりました。傷病者の方を日本へお招きして、義手や義足を製作し、3か月ほどのリハビリ治療の後、帰国していただき、次の傷病者をお迎えします。とりあえず4月中に6人の傷病者と家族2人の方をお招きし、桑名市(桑名市総合医療センター)、鈴鹿市(鈴鹿中央総合病院)、松阪市(済生会明和病院)で2人ずつ治療致します。このようにして当面の間63か月ごとの単位でリハビリ治療を進めていく予定ですが、聞くところによりますと、1,000人以上の方々がリハビリ治療を待っておられるそうです。

4)クラウドファンディング  
 義手や義足の製作、リハビリ治療、渡航費、生活費など、6人の治療のために1,000万円ほどかかります。その費用をクラウドファンディングにより集めようとするもので、330日より開始され526日まで続けられます。是非ともよろしくご支援のほどお願い申し上げます。詳細につきましては、下のwebサイトおよび「ちらし」をご覧ください治療を受けられずにいるウクライナの傷病者へ、日本でのリハビリ支援を(NPO法人SunPanSa 2023/03/30 公開) – クラウドファンディング READYFORhttps://readyfor.jp/projects/sunpansa01)。

ウクライナリハビリ支援レディーフォーのホームページ

 

 初冬の頃、夏と冬を代表する「ひまわり」と「木立(皇帝)ダリア」の花が並んで咲いています。奇妙な取り合わせですが、何となく微笑ましく思わずシャッターを切りました。世界中の国が、たとえ人種や宗教、政治や社会構造が違っても、並んで写真が撮れるようになれば・・・と願うばかりです。

 

                                                                                                                       令和54月4日                 

                      桑名市総合医療センター理事長 竹田  寛 (文、写真)         
                                    竹田 恭子(イラスト)

 

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