診療科・部門

心臓血管外科・呼吸器外科

当科は、心臓外科・呼吸器外科・血管外科の3領域を担当しています。各分野の専門医が互いにサポートしながら各種治療を行います。

基本方針としては、いずれの領域においても患者さんの生活を考えて最良の治療法を選択することを原則としており、特に手術・治療は低侵襲・High Quality Life(質の高い生活)を目標とし、呼吸器疾患では胸腔鏡手術を、血管疾患ではカテーテル手術などを積極的に選択しています。2023年1月より呼吸器外科手術では新たに手術支援ロボット「ダ・ビンチ」を使用したロボット支援胸腔鏡手術を導入しました。

また関連する内科系/外科系医師はもちろんのこと、麻酔科医師、放射線科医師、看護師、薬剤師、臨床工学士、療法士、栄養士など他職種のスタッフと共に、カンファレンス・ミーティングを行いチームによる最善の医療を提供するように努めています。

さらには、地域医療機関(かかりつけ医)との病院-診療所連携の他、周辺高次医療機関や三重大学との連携や遠隔通信によるカンファレンスを行うことで、総合的に質の高い医療を提供できるように日々努力しています。

主な診療内容・対象疾患

心臓血管外科部門

虚血性心疾患

狭心症、心筋梗塞は虚血性心疾患と総称します。これらの疾患は冠動脈と言われる心臓の表面の動脈に、動脈硬化が生じて閉塞・狭窄が生じて出てくるものです。循環器内科と合同でこれらの疾患に対しての治療を行っています。

心臓弁膜症

心臓を通る血液の流れは一方通行でないといけません。そのため心臓には4種類の逆流防止弁があります。それらの弁が硬くなり、動きが悪くなった場合を狭窄症と言います。
また、何らかの原因で弁の閉鎖が悪くなり、逆流が生じた状態を閉鎖不全症と言います。これらの弁膜症が起こると、少しの動きで息切れや動悸が出たりしてくることがあります。これらの疾患に対して循環器内科と合同で治療を行います。また弁膜症に伴って、しばしば心房細動という不整脈が出現します。心房細動は心臓内に血栓を作りやすい状態で、延いては脳梗塞の原因となります。できる限り不整脈を防止することで、その後の生活の質の向上につながります。

大動脈瘤

心臓から出て下腹部までつながっている一番太い動脈を大動脈と言います。正常は直径2㎝程の血管ですが、時として直径5㎝を超える大きさまで膨れ上がることがあります。大きくなればなるほど破裂の危険性が増し、破裂すると生命の危機に陥ります。大動脈の部位によって胸部、腹部など名前が付きますが、総じて(真性)大動脈瘤と呼びます。
また、大動脈の壁は3層からなるのですが、それがちょうど真ん中の層辺りで裂けてしまった解離性大動脈瘤があります。なかでも前触れもなく突然発症する急性大動脈解離の場合は、その後の短期間の経過中に破裂することが多く、緊急手術の対象となります。
これらの疾患に対しては、異常をきたした血管を人工血管に取り換える、人工血管置換術を行っています。またカテーテルによる血管内治療を三重大学のカテーテル治療チームと連携して治療しています。

末梢血管疾患

下肢の動脈が動脈硬化にて狭窄、閉塞し、歩行するにつれ血流不足となり疼痛が出現したり、安静時でも足が冷たく感じたり、足の指先から皮膚が壊死、潰瘍化してくる病気を閉塞性動脈硬化症と言います。私たちが主に行うのは、人工血管や自家静脈でバイパスを行う下肢動脈血行再建術です。循環器内科が行う血管内治療も含めて最適な治療法を選択します。病変が多岐に亘る場合などは、循環器内科と分担して治療を行うハイブリッド治療も行います。

下肢静脈瘤

下肢の静脈が拡張してぼこぼこしたふくらみが出てきたり、発赤やかゆみが出てくるのが下肢静脈瘤です。原因は下肢静脈についている弁が壊れてしまってできる場合と、静脈自体が閉塞しているために起こってくる場合があります。弁が壊れてできている下肢静脈瘤に対しては、ストリッピング術・高位結紮術、静脈瘤切除術の他、カテーテルを用いた高周波による血管内焼灼治療・カテーテルによる血管内塞栓術を行っています(静脈瘤血管内焼灼術実施認定施設)。

ブラッドアクセル手術(血液透析用シャント作成)

腎臓の機能が低下してくると、全身浮腫や尿毒症といった状態になってきます。その際に行うのが人工透析です。当科では腎臓内科と共同で人工透析のためのシャントの作成、合併症の処置等を行っています。

呼吸器外科部門

肺がん(原発性肺がん、転移性肺がん)

肺がんは男女とも悪性腫瘍の中で占める割合が高いがんで、現在でも患者数が増加傾向にあります。当科で最も多く手術を行っている疾患です。3∼4㎝の創と23ヶ所の孔から胸腔鏡を使用し、モニターを見ながら行う低侵襲の「完全胸腔鏡手術」を積極的に行っています。従来の開胸手術(肋骨と肋骨の間に開胸器という器械を装着し、肋間を開大して直視下に行う手術)と比べて、術後の疼痛が少なく術後早期の回復が早い傾向にあります。20231月より「手術支援ロボット・ダビンチ」を使用したロボット支援胸腔鏡手術を開始しました。

気胸

肺にできた風船状の袋(ブラ)が破れて空気が胸腔内(肺外)に漏れ、肺がしぼんでしまう病気です。若年者に発症することの多い疾患ですが、ご高齢の方で肺気腫などによりもろくなった肺表面の膜が破れることでも生じます。また、月経随伴性気胸と呼ばれる女性特有の気胸もあります。これらの疾患に対しても、胸腔鏡手術を行っています。

縦隔腫瘍

胸腔の心臓と肺の前面や後面、あるいは心臓と肺の間のスペースに生じる腫瘍で、良性腫瘍から悪性腫瘍までさまざまな腫瘍があります。周囲の組織(臓器)への浸潤を認めたり、大きな腫瘍に対しては胸骨正中切開(胸の正面の胸骨という骨を縦に切開する)にて手術を行うこともあります。それ以外の腫瘍に対しては胸骨を切開せずに、2~3ヶ所の小さな孔から胸腔鏡を用いた手術を行っています。また全身の筋肉が麻痺してしまう重症筋無力症と呼ばれる疾患に対する手術(胸腺摘出術)も行っています。

肺良性腫瘍、胸壁腫瘍

肺良性腫瘍や胸壁腫瘍に対しても、肺がん手術と同様に胸腔鏡手術を第1選択として行っています。

膿胸・肺感染症

胸の中(胸腔内)に感染が生じて膿がたまる膿胸や肺感染症はドレナージ(膿胸の場合、体外に膿をチューブで持続的に流す治療)と抗生物質投与による治療が基本的です。しかしこれらの治療でもなかなか治らない場合、時期を逸することなく手術を施行することで治癒が得られやすくなります。

胸部外傷

交通事故や転落事故などで気胸・血胸・多発肋骨骨折・肺損傷・気管支損傷などを来した場合に、積極的に医療を行っています。必要に応じて胸腔ドレナージや、手術・人工呼吸管理などを行います。

 

心臓血管外科・呼吸器外科 手術実績(2020年度)

外来担当医表

 
午前@am
[予約制]
天白宏典
(呼吸器外科)
湯淺右人
(心臓血管外科)
(呼吸器外科)
澤田 康裕
(第2、4)
[完全予約制]
処置川口晃司
(呼吸器外科)
午後@pm
[予約制]
【静脈瘤外来】
湯淺右人
【静脈瘤外来】
湯淺右人(再診)

医師紹介

湯淺 右人

氏名 湯淺 右人胸部外科(呼吸器外科・血管外科)部長,集中治療室部長
専門領域

大血管疾患,末梢血管疾患(動脈・静脈),呼吸器疾患

資格等 日本胸部外科学会認定医・専門医会員
日本外科学会認定外科専門医・指導医
日本心臓血管外科専門医・修練指導者
日本脈管学会認定脈管専門医・指導医
下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術実施医・指導医
臨床研修指導医講習修了
緩和ケア研修会修了
弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター講習会修了
三重大学胸部心臓血管外科臨床講師

氏名 天白 宏典呼吸器外科部長
専門領域 呼吸器疾患、縦隔腫瘍、胸部外傷
資格等 日本外科学会認定外科専門医・指導医
日本呼吸器外科専門医・呼吸器外科学会評議員
日本胸部外科学会専門医会員
緩和ケア研修会修了
臨床研修指導医講習修了
三重大学胸部心臓血管外科臨床講師

氏名 川口 晃司非常勤医師
専門領域 呼吸器疾患,縦隔腫瘍
資格等 日本外科専門医・指導医
日本胸部外科学会正会員
日本呼吸器外科専門医・指導医
ロボット支援手術認定プロクター
日本ロボット外科学会専門医
三重大学胸部心臓血管外科准教授