理事長の部屋

理事長の部屋

11、12月 ポインセチア

―クリスマス・ケーキのトッピング―

h2611-12-pho-01
※画像クリックで大きな画像が見られます。

 今年も残すところ1か月足らずとなりました。これから忘年会、クリスマス、大掃除、仕事納めなど、歳末の慌ただしさに追われます。まして今年は衆議院総選挙も行われますから、忙しさはなおさらのことでしょう。ここで一つお詫びしなければなりません。本来ならば今回は11月号になりますが、街では師走の慌ただしさに奔走しているのに、11月とはいかにも間延びしてしまいます。これは最初の4月号を5月初旬に出したために、1か月ずれてしまったからです。先月までは余り気にならなかったのですが、さすが年末年始になると1か月のずれの影響は大きくなります。何しろ来年1月に12月のことを書くことになるのですから。それで今回は、11月、12月の2か月分を一度に書くことにして、季節を合わせることとさせていただきます。

 ところで上は何の写真だと思われますか? 黄、赤、黄緑など色とりどりのチョコレート で作られたクリスマス・ケーキのトッピングや飾りのように見えます。美味しそうですね。

h2611-12-pho-02 h2611-12-pho-03
ポインセチアの花
 

 実は、これはクリスマスの花、ポインセチアなのです。クリスマス・シーズンに入り街のあちらこちらで見かけますし、ご自宅で楽しんでみえる方も多いと思います。ポインセチアの花と云えば、軸の先端近くの赤い葉のような部分だと思われている方もあるかも知れませんが、実はそのまた先の中央奥に本当の小さな花が集まって咲いているのです。赤い葉のような部分は、苞(ほう)と呼ばれる葉が変化したもので、苞葉とも呼ばれます。苞(あるいは総苞)とは小さな頃の蕾を包む袋で、蕾の成長とともに分割され開きます。「どくだみ」や「はなみずき」では、開いた苞がまるで花びらのように見えます。

どくだみの開花
h2611-12-pho-04
蕾を包む苞
h2611-12-pho-05
苞が分割され開きかけたところ
h2611-12-pho-06
開いた苞は4枚の花びらのように見えます

 ところが同じ苞でもポインセチアの場合では、少し異なるようです。確かに軸の先端近くには赤色となった苞葉が十数枚みられますが、これらはどう見ても花びらでなく葉です。それではポインセチアの蕾と苞葉との関係はどのようになっているのでしょうか。拡大して観察しますと、下にある左の写真では、小さな蕾の根元から苞葉の若芽が左右に出て、あたかも苞葉は蕾を包んでいたように見えます。しかし両方の苞葉とも裏面が上になっているようで、果たしてほんとうに蕾を包んでいたのかどうか分かりません。右側の写真は、苞葉の若芽の根元を拡大して撮影したものですが、苞葉は蕾より少し下方の茎のようなところから出ていて、全く蕾を包んでいないことがわかります。

h2611-12-pho-07 h2611-12-pho-08

 下の写真をご覧下さい。ポインセチアの先端部ですが、黄緑色の球状の蕾が10個近く集まっています。その集団を小さな赤い苞葉が輪状に取り囲んでいます。ポインセチアの苞葉は、1個、1個の蕾を包むのではなく、何枚かが一緒になって蕾の集団を取り囲んでいるのです。ちょうど苞葉で作られた杯(さかづき)かコップの底に蕾や花の集団が潜んでいるような形になります。しかもポインセチアの花には花弁がありません。「めしべ」や「おしべ」だけから成る何個かの花が,包葉の内部に包まれて,花序(茎に対する花の付き方)全体が一個の花のようにみえる構造を杯状花序(はいじょうかじょ)と云い、ポインセチアなどトウダイグサ科の仲間の花の咲き方の特徴です。

h2611-12-pho-09
上から見た蕾の集団

h2611-12-pho-11
横から見た蕾の集団

h2611-12-pho-10
トウダイグサ
h2611-12-pho-12
h2611-12-pho-13

 

 それでは、ポインセチアの花はどのようになっているのでしょうか。詳しく見てみましょう。先にも述べましたようにポインセチアの花には花弁が無く、それぞれ「おしべ」、「めしべ」に相当する雄花(おばな)、雌花(めばな)、および蜜腺(腺体)から構成されます。雄花は、はじめ赤い小さな手指のような形をしていますが、成長するとチョコレート色の長い軸になり、先端に黄色い葯(花粉)が付きます。これがチョコレートのお菓子のように見えたのです。雄花が成熟した後、その間から雌花が出て来ます。雌花は、3本に枝別れした花柱を持っていますが、どんどん成長して最後は図のように垂れ下がります。このようにポインセチアでは、自家受粉を防ぐために雄花が終わった後に雌花が現れますが、これを雄性先熟と云います。今回の写真を撮るためにポインセチアの鉢植えを幾つか買って来て、花の変化する様子を観察していました。雄花はどの花をみても確認できるのですが、雌花がなかなか見つかりません。そのうち出てくるだろうとじっと待っていたのですが、その前に花が落ちてしまうのでしょうか、結局見ることはできませんでした。そこで郊外の大きな花屋さんへ行ってポインセチアの花を片端から調べてみましたが、どうしても見つけることができません。店員さんにお聞きしても、余り見かけないとのことです。そこで残念ながら雌花は、イラストで紹介することとしました。 蜜腺は蕾の頃から認められ、中に甘い蜜が入っていて虫を惹きつける役目をします。

 

h2611-12-pho-14
蕾の頃から蜜腺がみられます
h2611-12-pho-15
蜜腺に入っている甘い蜜が光っています
h2611-12-pho-16
小エビ草
夏の花「小エビ草」は、ポインセチアと同じように十数枚の苞葉が海老茶色に変色し、その先に小さな白い花が咲きます。

 もう一度、蕾の集団を眺めてみましょう。大小とりどりの黄緑の球が連なる様は、昔、風邪薬のコマーシャルで人気のあったカエルの人形のようです。黄色の蜜腺は、河童の大きな口を想い起こさせます。赤い顔をして黄色い両耳を頭の上につけたミッキー・マウスもいます。皆、クリスマス・ケーキを囲んで、わいわいがやがや楽しそうに遊んでいます。クリスマス、子供達にとっては、この上ない楽しみですね。

h2611-12-pho-17 h2611-12-pho-18

 毎年この季節になると、テレビや街中でクリスマスの歌をよく耳にします。昔は「ジングルベル」「赤鼻のトナカイ」「聖しこの夜」「ホワイト・クリスマス」などが定番でしたが、最近では、山下達郎さんの「クリスマス・イブ」や稲垣潤一さんの「クリスマス・キャロルの頃には」などでしょうか。「クリスマス・キャロル」とは、主としてキリスト教文化圏において、キリストの誕生をお祝いするためにクリスマスの頃に歌われる曲の総称です。元々「キャロル」とは、西欧において13世紀頃より歌われた踊りのための民衆の歌でしたが、徐々に宗教的な行事の中で歌われるようになりました。日本語では祝歌、頌歌などと訳されます。「クリスマス・キャロル」はその代表的な存在で、中世の讃美歌から「アヴェ・マリア」「ジングルベル」「赤鼻のトナカイ」などのクリスマス・ソングと呼ばれるものまで含まれるそうです。日本の「クリスマス・イブ」などのクリスマス・ソングもクリスマス・キャロルと呼ばれるようになるのでしょうか。

 クリスマス・キャロルと云えば、チャールズ・ディケンズ(1812年―1870年)の小説が有名です。ディケンズは19世紀イギリスの大作家であり、新聞記者、編集者としても活躍しました。「オリバー・ツイスト」「ディヴィッド・コパフィールド」「二都物語」「大いなる遺産」などの作品を遺したイギリスの国民的作家で、ポンド紙幣にも登場します。日本で云えば、夏目漱石でしょうか。ディケンズの代表作は今でも度々映画化されていますから、観られた方も多いことでしょう。「クリスマス・キャロル」は、貪欲で冷徹で孤独な老人スクルージが改心する話です。スクルージは、クリスマスの日に人々がキリストの誕生を祝ってお互いに助け合うというキリスト教の精神を嫌い、貧しい人々のために寄付をしようとしません。クリスマス・イブの夜、彼は夢を見ます。昔の仲間が幽霊になって出て来ますが、鎖につながれています。生前貧しい人を助けなかったためだと云います。「スクルージはもっと大きな鎖につながれるであろう」と云って消えていきます。それから3人の幽霊が現れ、スクルージの悲惨な未来の姿を告げます。翌クリスマスの朝、夢から目覚めたスクルージは、心をすっかり入れかえ、貧しい人のために尽くします。h2611-12-pho-19h2611-12-pho-20

 私は、ディケンズと云えば「炉ばたのこおろぎ」という小説を思い出します。確か高校時代の英語の副読本で、その一部を読んだことがあると記憶しています。この物語は、片田舎で暮らす貧しい運送屋の夫とおちびちゃんと呼ばれる妻を中心として、素朴で善良な人々の心暖かな交流をユーモアと涙をまじえて描いた名作です。彼らの繰り広げる悲喜劇を炉ばたのこおろぎがチロチロと鳴きながら見守ります。小説の冒頭に描かれているこおろぎと鉄瓶の湯気との鳴き比べは有名で、私が英語で学んだのもここの一部分です。その日本語訳を引用します。

まるで競馬さながらの熱狂ぶりだった。チロ チロ チロ! こおろぎが1マイル抜いていた。ブン ブン ブン! 鉄瓶は大ごまのように遠方で大活躍である。 チロ チロ  チロ! こおろぎが角をまがった。ブン ブン ブーン! 負けるものかと、鉄瓶が彼独特のやり方で頑張る。 チロ チロ チロ! こおろぎは前にも増して威勢が良い。ブン  ブン ブーンンン! 鉄瓶はのろいが堅忍不抜だ。 チロ チロ チロ! こおろぎは相手を完全にうち負かそうとする。 ブン ブン ブーンンン! 負かされてなるものかと鉄瓶。しまいに両方とも試合のあわただしさに気が顛倒してしまい、鉄瓶がチロチロ鳴いてこおろぎがブンブン言ったのか、それともこおろぎがチロチロ鳴いて鉄瓶がブンブン言ったのか、または両方いっしょにチロチロ鳴いて両方いっしょにブンブン言ったのか、いくらかでもはっきり決定するには諸君や私よりもっと明晰な頭脳を必要としたであろう。

(炉ばたのこおろぎ 村岡花子訳、新潮文庫)

 訳者の村岡花子氏は、先のNHK朝のドラマで話題になりましたが、彼女はディケンズの小説の中で、「クリスマス・キャロル」と「炉ばたのこおろぎ」を愛読し、それでこの2編を翻訳したそうです。今年のクリスマス・イブにでも、お読みになられては如何でしょうか。

h2611-12-pho-21

 クリスマスは、どんな子供にとっても格別な日です。私事になりますが、私の父は映画「ウッジョブ」で有名になった一志郡美杉村(現在の津市美杉町)で材木業を営んでいました。私を長男とする兄弟4人は、レストランを経営する母と一緒に津市内で住んでいました。父は2日に1度の割りで、美杉から津の家へ帰ってきます。父の帰って来るのは夜の8時過ぎで、一人で晩御飯を食べます。おかずはいつも、店のコックさんに作って貰う「ビフテキ」でした。父は羨ましそうに見つめる私達子供を横にして、ビールを呑みながら美味しそうに食べます。日頃、魚か野菜の煮付けしか食べさせて貰えなかった私達には、焼けた肉の何とも言えない美味しそうな匂いは堪りません。「一度はビフテキを食べてみたい」と夢にも出て来そうでした。当時、肉はとても高くて、たとえ料理屋の息子とはいえ食べさせて貰えるものではありませんでした。ある日、とうとう母親に直訴しました。「1年に1度、クリスマス・イブの日にビフテキを食べさせて欲しい」と。答は意外とO.K.でした。それからクリスマスは、私達兄弟にとって至福の日になったのです。
 私の友人の中には、20年以上もクリスマスの日にサンタクロースに扮して施設の子供達にプレゼントを配っている人もいます。またサンタクロース姿でヘリコプターに乗り、全国の大学病院の小児科病棟を慰問して、重症の子供達にプレゼントを配っているボランティアの方々もいます。クリスマスには、世界中でいろいろの人々や団体が、貧しい子供達、病気で苦しむ子供達のために様々な慈善活動を行っています。日本では、最近児童虐待が大きな社会問題となっています。今年ノーベル平和賞を受けたパキスタンのマララ・ユスフザイさん達のように、様々な理由で教育を受けられない子供達もいます。世界には、夥しい数の不幸な子供達が、飢えや寒さに震えています。私達大人にとってクリスマスは、宗教をこえて不幸な子供達のことに思いを巡らせる日なのではないでしょうか。皆さん、良いクリスマスをお迎え下さい。

h2611-12-pho-22
地域医療連携室のスタッフの皆さん

 さて病院の話題です。地域住民の皆さんに医療や福祉の面で安心して暮らしていただくためには、地域における医療機関や介護施設が相互に緊密な連携を取り合うことが大切です。急性期や慢性期病院、専門病院、診療所、介護施設、在宅ケアセンターなどの諸施設が、緊密なネットワークで結ばれて様々な情報を共有し、患者さんの施設間の移動がスムーズに行われるようにしなければなりません。そのため最近では、どこの病院にも地域医療連携室が設置されていて、紹介患者さんの他院からの受け入れや逆に他院への紹介、紹介元の先生への診療結果の報告などの業務を精力的に行い、医療機関が変わっても患者さんの診療が継ぎ目なく円滑に行われるように努めています。桑名西医療センターの地域医療連携室では、そのような紹介患者さんのお世話に加えて、入院患者さんに対する医療支援や退院支援に積極的に取り組んでいます。平成22年に配置されました退院調整看護師が、医療ソーシャルワーカーと協力しながら、入院中の患者さんの様々な相談に対応し、退院後の療養のあり方などについて患者さんやご家族の皆様と一緒になって親身に話し合っています。患者さんの高齢化が進むことで病状はもとより家族関係や家庭背景も複雑化して、退院へ向けての支援や援助は決して容易ではありません。入院を機に施設へ入らざるを得なくなる場合も少なくないのです。本センタースタッフの人達の目的は、患者さん一人一人の事情に配慮しながら入院前の生活(療養場所)に戻すことであり、そのためには入院早期から退院支援を開始することが重要であると考えています。それで、在宅ケア移行支援研究所の宇都宮宏子氏の退院支援の三段階プロセスを導入して、入院早期からの支援と在院日数の短縮化、在宅移行支援へつなげて行こうと頑張っています。退院支援を円滑に行うためには、地域の医療機関や介護施設、在宅サービスセンターなどとの連携が必須であります。そのためには退院前カンファレンスや勉強会、研修会を通じて、地域のケアマネージャーや在宅医師、訪問看護師、福祉関係の事務職員などとの交流を深めねばなりません。現在、患者さんの在宅での様子を病院内のモニターで観察することができるようなシステムの導入を検討していますが、これが実現しますと在宅サービスの限界の一つを突破できるものと期待されます。

 桑名市では、行政や医療機関、介護施設、その他の諸施設、諸団体が一体となって、地域包括ケアシステムが構築されています。既に幾つかの素晴らしい成果が挙がっており、その活発な活動は全国に誇れるものです。私達職員一同、大きな地域包括ケアシステムの中における本院の位置と役割をしっかり認識し、桑名地域における医療と福祉の向上にために貢献していきたいと願っております。今後ともどうぞよろしくご支援の程お願い申し上げます。

(平成26年11月)

桑名市総合医療センター理事長  竹田 寛(文、写真)
竹田恭子(イラスト)