理事長の部屋

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1月 なんてん(南天)

 

―赤い鳥小鳥、なぜなぜ赤い―

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※画像クリックで大きな画像が見られます。

 明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。今年の元日はうっすら雪化粧でした。元日の雪、久し振りのことです。大晦日から元日にかけて雪が降ったのは、10年ぶりでしょうか。津地方気象台の統計では、2004年12月31日に12cm の積雪を記録したとあります。寒かったお正月、皆さんは如何お過ごしになられましたか。私は、毎年元旦は朝9 時に郵便局へ行き、一枚の年賀葉書に元旦のスタンプを押して貰って投函します。九州の友人へ送るためのもので、彼は普通切手や葉書に押印されたスタンプを収集するのが趣味で、日本でも有数のコレクターだそうです。年賀状に押された元旦のスタンプは貴重なのだそうで、もう20年以上も続けています。元日の朝は郵便局へ、これを済まさないと私の正月は始まりません。その途上、街の様子を眺めていますと、人通りはなく車もほとんど走らず、不思議なほど静まりかえっています。午後になると雑踏が始まりますが、午前中は嘘のように静かです。東京や大阪、名古屋などの大都会では、日頃の賑わいが激しいだけに、余計静かに感じることでしょう。初詣の社寺や行楽地などを除き、日本全国至る所穏やかに静まります。これが日本のお正月でしょうか。

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聖宝寺境内の「なんてん」

 

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 そんなのどかな日本の正月を飾る花は、何と云っても「なんてん(南天)」です。上の写真はいなべ市の聖宝寺境内に植えられている「なんてん」の木です。聖宝寺は紅葉で有名なお寺ですが、境内にはたくさんの「なんてん」の木が植えられています。麗らかな木漏れ日を浴びて静かに微笑むように光る赤い実を見ていますと、心温かくなります。

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 冒頭には、いきなり「なんてん」の実の拡大写真を出しましたが、この時季赤い実を付ける植物はたくさんありますので、これだけでは何の実かよく分かりません。一個一個の実を観察しますと、表面はツルツルではなく、みかんの皮のようにザラザラしていて、小さな赤いオレンジかキンカン(金柑)のようにも見えます。

 「なんてん」の木の特徴は、実よりも葉にあります。上の写真のように「なんてん」には多数の枝に小さな葉がたくさん付いているように見えます。その枝を中心部へ辿りますと一本の太い軸となり、太い幹から分枝しています。

 

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幹から切り離した「なんてん」の葉
全体が一枚の葉です

 驚くことに、幹から直接分枝する太い軸から先の部分全体が本来一枚の大きな葉であり、それが一定の規則性をもって細かく分裂したために多数の葉と枝のようになったのです。このような葉の構造を複葉と云い、一枚一枚の小さな葉を小葉と呼びます。「なんてん」は同じ複葉植物の中でも複雑な分裂を繰り返し、一枚の葉に数百枚の小葉のみられることもあります。
 小葉は、秋から冬にかけて先端の方から紅葉し、次第に拡がっていきます。

「なんてん」は、「難を転じて福をもたらす」という語呂合わせから縁起の良い植物とされ、昔から庭木として家の鬼門(東北の方角)や便所の側に植えられて来ました。今でも古い住宅街を歩いていますと、あちこちの庭で見ることができます。また妊婦が安産を願って床の下に敷いたり、武士が出陣の前に床に挿して勝利を祈願したそうです。

 

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聖宝寺裏の神社の「なんてん」

 「なんてん」はメギ科ナンテン属の植物で中国原産と云われ、中国名の南天燭(または南天竹)が短くなって「なんてん」と呼ばれるようになったとのことです。それにしても「なんてん」「南の天」とは何とロマンを感じさせる名前でしょうか。燭とは明かりのことですから、南の天の明かり、すなわち太陽のことでしょうか、あるいは南十字星を指すのでしょうか。イメージは大きく膨らみ、大宇宙を駆け巡ります。植物学者の菱山忠三郎氏によれば、「南天竺」すなわちインドの南の方から渡来したと云う意味だそうです。

 「なんてん」は神社の境内でもよく見かけ、聖宝寺の裏にある小さな神社にも、入口の石の鳥居の横に植えられていました。南勢地方、飯南町には「なんてん」で有名な柿野神社という神社があります。別名「なんてん神社」とも呼ばれるそうですので、休みの日に訪ねて来ました。住宅地の中にひっそりと鎮座する小さな神社ですが、「なんてん」の木が十数本植えられています。本殿の階段横にある木は最も大きく立派で、狛犬の石像を背景にして堂々とたくさんの実を付けていました。木の根元には、小さいながら黄色の実を付けた「なんてん」もあります。「なんてん」に鳥居、狛犬やきつねの像は良く合いますね。

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柿野神社の「なんてん」
右下に黄色い実がみえます
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「なんてん」の黄色い実
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千両
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万両

 冬に赤い実を付ける植物にはいろいろありますが、よく見かけるものは「千両」「万両」「ピラカンサ」などです。千両はセンリョウ科の常緑小低木で、木陰など暗い場所を好み群生します。

 

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h2701-pho-13赤い実が密集して実るピラカンサ(右側)

 一方、万両はヤブコウジ科の常緑小低木で、ぽつんぽつんと離れて育ちます。万両の特徴は、茎の先端に葉が繁り、その下方に赤い実が群がって実ります。他にも百両、十両もあり、百両はカラタチバナ科、十両はヤブコウジ科に属し、それぞれ赤い実を4~5個、2~3個ずつの房となってつけます。
 実の数が多くなるにつれて十両、 百両、千両、万両となります。
 一方ピラカンサは、中国原産のバラ科トキワサンザシ属の植物で、単にトキワサンザシとも呼ばれます。先端に黒い斑点のある赤い実が、ぶどうの房のようにびっしり密集して実るのが特徴です。右の写真では、画面左下に「なんてん」、右側にピラカンサの実が写っています。

 これらの赤い実は、実に鮮やかな赤色をしていますが、これは鳥に目立つようにするためで、鳥が食べて種を遠くへ運んで貰うことを目的にしているのだそうです。しかし鳥はあまり食べないようで何時までも残っています。見た目程に美味しくないのかも知れません。

赤い鳥小鳥

北原白秋作詞 成田為三作曲

赤い鳥 小鳥
なぜなぜ赤い
赤い実を食べた

白い鳥 小鳥
なぜなぜ白い
白い実を食べた

青い鳥 小鳥
なぜなぜ青い
青い実を食べた

誰でも知っている童謡「赤い鳥小鳥」です。赤い実を食べたから赤い鳥になった、白い実を食べたから白い鳥になった、青い実を食べたから青い鳥になった、子供、特に幼児らしい素朴な発想です。大人ではとても思いつきません。さすが白秋ですね。「うさぎの目が赤いのはにんじんが好きだから」というのも同じような発想でしょう。確かに食べ物によって体の色が変化するということは、常識的には考えられません。

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ところが自然界には、不思議なことがあるのです。例えばお正月のめでたい魚、鯛です。天然の鯛は、色鮮やかな赤桃色をしていて、特に産卵期の春先には赤味が増すために「桜鯛」と呼ばれます。鯛は深海で生息し海老や蟹などの甲殻類を頑丈な歯で丸ごと噛み砕いて食べています。海老や蟹の身や殻にはカルチノイドの一種、アスタキサンチンと呼ばれる赤橙色の色素が含まれていて、この色素を摂取しているから赤くなるそうです。鮭の身の赤いのも、この色素によるものだそうです。鯛の養殖ができるようになった頃、鯛の色が天然のように赤くならず困ったそうです。そこで養殖と天然の鯛を比較してみますと、大きな相違点が二つ見つかりました。一つは養殖の鯛は、深海で暮らす天然の鯛と異なり海面から浅い生簀(いけす)で飼育されるため、日焼けして黒くなってしまうことです。もう一つは餌に蟹や海老などの甲殻類を与えておらず、アスタキサンチンの摂取量が少なかったことです。そこで今では、鯛の生簀にはネットで覆いをして日焼けを防ぎ、アスタキサンチンを含む餌を多く与えて赤くするそうです。一昔前には、養殖の鯛と云えば色目は良くないし肉も油が乗ってべたべたしていて、正直美味しくありませんでした。しかし今は養殖技術の発達により、天然鯛と変わらない鮮やかな赤色をし、肉質も淡泊な美味しい養殖鯛を食べることができるようになりました。有難いことです。

 これと同じ現象が、フラミンゴの美しい赤桃色の羽毛でもみられます。フラミンゴの羽は、生まれた直後は白い色をしていますが、藻に含まれるカンタキサンチン(アスタキサンチンの仲間です)と呼ばれる赤い色素をたくさん摂取するために、あのような美しい赤桃色になるそうです。動物園でも餌にカンタキサンチンを混ぜて羽毛の赤桃色を維持しているのだそうです。白秋の詩も、鯛やフラミンゴで書かれていたら正しかったのでしょうね。

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明るい陽光を透かす「なんてん」の黄緑の葉を眺めていますと、春の息吹が感じられ嬉しくなります

 さて病院の話題です。今回は病院の食事を取り上げます。入院患者さんにとって、一番の楽しみは食事です。食事制限のある人にも無い人にも同じでしょう。単調な入院生活も、三度の食事が美味しければ明るく楽しいものになります。患者さんに対するアンケートでも、食事を美味しくして欲しいという要望は常に上位を占めます。

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栄養管理室のメンバー

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栄養指導の様子

南医療センターは、もともと循環器専門の病院でもあり以前より減塩食の改善などに熱心に取り組んで来ましたが、平田和男院長の方針で、ただ単に体に良いだけではなく美味しくて楽しい食事を提供することに努めています。私も月一回平田院長と一緒に検食していますが、いただく料理はどれも塩分控えめなのに、ほど良い味わいがあり、色彩も美しくて食欲をそそられます。何よりも献立に工夫を凝らし、ていねいに調理されているのが嬉しく、手作りの家庭料理のような感じがします。病院の中に家庭的な雰囲気を醸成すること、これは患者さんにとっても職員にとっても非常に大切なことだと確信しています。現在南医療センターの栄養管理室には2名の管理栄養士が勤務していますが、二人とも明るく心やさしい女性です。彼女たちは、「食事は美味しくなければ食べてもらえず、食べてもらえなければ治療の一環にならないという考えから、患者さんの『食べたい思い』を大切に、治療食でも自宅で作ったように心温かく、美味しい食事を提供すること」を目的にして日々頑張っています。そのために二人は、患者さんが入院されたら直接ベッドサイドへ訪問して、食事の摂取量はどれぐらいか、どのような形の食事にすれば食べていただけるかなどを確認し、患者さん一人ひとりに合った食事形態を提供するように心掛けています。また栄養サポートチームや褥瘡チームの病棟回診やカンファレンスへ参加したり、桑名地域における栄養士ネットワーク活動に積極的に参画して、地域で連携した栄養改善にも取り組んでいます。さらに入院中や外来通院の患者さん、あるいはご家族に対して、自宅における食事や調理法に対する不安や疑問を取り除くために、生活習慣病の予防と病気の悪化防止を目的とした栄養指導を行っています。昨年度は入院栄養指導530件、外来栄養指導438件を行い、高齢の患者さんやご家族の方々には、文章が少なく絵を多く用いた媒体を利用して、理解しやすいように努めています。今後も個人のライフスタイルに合わせた丁寧な栄養指導を継続していきたいと張り切っています。これからもどうぞよろしくお願いします。

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(平成27年1月)

桑名市総合医療センター理事長  竹田 寛(文、写真)
竹田恭子(イラスト)